ロシア人の作家、ザミャーチンの描いた、共産主義社会を批判したアンチユートピア小説。
1920の発刊以来ソ連時代は本国では発禁になっていた。(ロシア革命でロマノフ王朝がたおれたのが1917年、レーニンがソ連を建国したのが192年)
政治、経済、社会のあらゆることが政府によって統制された近未来社会。セックスに関しても「ピンク・チケット」という券を、政府が決めた日に各自に支給し、政府の決めた相手とおこなう。その中で、主人公「D-503」の男女関係を通して、全体主義国家の陰鬱さがえがかれている。
ジョージ・オーウェルの「1984」と並び称される、アンチユートピア小説の傑作として名高い本書であるが、お決まりの全体主義社会の構図があまりにもありふれたものにうつってしまい、(むしろこの本が源流に近い場所にあるのだが)現在の視点で見ても色あせない、独自の世界観や設定を読み取ることができなかった。
全体主義社会の中の男女の関係を主軸に物語が展開していく本書であるが、ジョージ・ルーカスが学生時代に作った映画の長編であり、商業デビュー作である、「THX-1138」(1971年公開)にイメージが近いと感じた。

原題:「Мy」1920
著者:エフゲニー・ザミャーチン(1884-1937)

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