プロシア(現ポーランド)の作家、挿絵画家。本書は想像上の、異星生物の珍奇な生活や社会を題材とした短編集であるが、SFというよりもむしろ奇想文学に類する作品であると感じる。同じ時代、すでにH・G・ウェルズの「宇宙戦争」が刊行されており、科学小説というジャンルはできていたにも関わらず、それらとは、袂を分かち、宇宙や異星人を題材にしているにも関わらず、科学的知識と呼べるような素材はまったく介さない作風は「宇宙文学」と称される。私としては、シェーアバルトは宇宙や異星人という題材にテーマをこめて何かを語るのではなく、言葉遊びの一部として宇宙や異星人をとりあげているに過ぎないと感じる。また、各短編も、戯曲のとある一幕といった感覚で、それ自体でストーリーが完結しておらず、評価をくだしがたい作品だと感じた。

原題:「Astrale Novelletten」1912
著者:パウル・シェーアバルト(1863-1915)

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