著者は、17世紀フランスの著述家。本書をSFに分類することができるかには考える余地があるが、当時最先端の天文学を中心とした科学的知識に根ざして書かれた作品であり、原題においても充分に読み応えのある作品であるため、紹介する。
内容は、天文学者の主人公が、サロンに集まる貴族の御婦人方に、最新の天文学の知識をもとに太陽系のありようを、科学的知識の基礎がない人にもわかるように、七夜にわたって、説きあかしていく物語である。
火星や水星、はては土星にいたるまで太陽系の星々にそれぞれ異なった「人類」が存在している証拠を、推理と考察によって明らかにしていく。そのあざやかな思考実験が平易な文章で語られ、まるでおとぎ話のような世界をつくりだしている。
出版当時、サロンを席巻し、ベストセラーとなった。
ジャンルとしては、「複数世界論」(地球以外にも生命、文明が存在し、宇宙は人間を中心としてなりたっているわけではないとする思想体系。哲学、宗教などにも関連づけられる)に分類される本書であるが、読み物として大変優れている。
原題:「1686年」
著者:ベルナール・ル・ボヴィエ・ド・フォントネル(1657-1757)
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