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TECH NOTES / 03

IDML は、要素の順番ひとつで図形を黙って潰す

2026年10月 石井 洋平(合同会社石井デザイン研究所 代表)

Adobe は、Illustrator のデータを InDesign のデータに変換する正式な機能を出していません。市販の変換ソフトもありますが、日本語の組版は崩れます。そこで、Illustrator のデータを読んで、InDesign が開ける IDML を自前で書き出す道具を作りました。

IDML は、InDesign の書類を XML で書いたものです。仕様書は公開されていますが、書いてあるとおりに作っても、InDesign は間違いを指摘してくれません。開けるけれど、中身が黙って違う。そういう失敗ばかりでした。

1. 要素の順番が違うと、図形が 10×10pt の箱になる

ある図形で、透明の設定(<TransparencySetting>)を、図形の形を書く部分(<Properties>)より前に書いていました。InDesign が実際に書き出すデータでは、形が先で、透明の設定は後です。

順番が逆だと、InDesign は形を読み落とし、図形を 10×10pt の小さな箱にします。エラーは出ません。しかも、潰れた箱は全部同じ座標に積み重なるので、画面では「黒い多角形がひとつ」あるように見えます。

透明・乗算・光彩を持つ図形でしか起きないので、素直なデザインでは出ません。凝ったデザインほど踏みます。

このとき、誌面では3つの症状が同時に出ていました。

  • 黒い多角形の山ができる
  • 文字の下に敷いた、白い半透明の角丸が消える
  • 見出しの帯が消える

3つ別々の原因を探して時間を使いましたが、原因は順番違いの1か所だけでした。症状の数で原因の数を見積もると迷います。

2. 参照の名前が食い違うと、塗りが消える

グラデーションは、定義の側に付けた名前(Self)を、図形の側から参照して使います。この2つの書き方が少しでも食い違うと、InDesign は参照先を見つけられず、図形は塗りの無い状態で開きます。これもエラーは出ません。

切り分け方:塗りが消えた図形のグラデーションを、いったん単色の塗りに差し替えてみる。単色なら出るなら、図形ではなく参照の問題です。

3. 書き忘れた設定は、InDesign の既定値で埋まる

外側光彩の色を書き出していませんでした。書かなければ、InDesign の既定の白で開きます。

「白が既定なら、白のときは書かなくていい」と省いていたのですが、実際のデータを数えると、色付きの光彩が21件、白が12件で、白はむしろ少数派でした。描画モードも、色付きは乗算、白は通常と分かれていました。

直し方:既定値と同じでも、値は常に書く。省いてよいかどうかを毎回判断するより、全部書くほうが安全です。

4. 日本語のファイル名の画像だけが落ちる

配置画像のリンク先を、ファイル名をそのまま(UTF-8 のまま)書いていました。英数字の名前の画像は問題なく開き、日本語の名前の画像だけが「見つからない」になります。

直し方:リンク先の URI は、英数字以外をパーセントエンコードする(例:写真.psd → %E5%86%99%E7%9C%9F.psd)。

5. 「白いグラデーション」は色ではなかった

元の Illustrator データで、白からの透明のグラデーションに見えていた部分は、PDF として読むと、色ではなく透明マスク(/SMask)でした。InDesign 側でこれを受けられるのは「グラデーションぼかし」です。

ただし、グラデーションぼかしは途中の色の変わり目(分岐点)を細かく持てません。元のマスク全体の長さを渡すと、早く消えすぎます。実際に濃さが変わっている区間だけを渡すと、元に近くなりました。

見つけ方

どれも、仕様書を読み込んで見つけたものではありません。効いたのは次の方法でした。

  • InDesign に実物を作らせて、書き出した IDML を読む。同じ図形を InDesign で作って IDML で書き出し、自分の書き出したものと要素の並びを比べる。順番違いはこれで一目で分かりました。
  • 見た目は、描かせて見る。色や重なりを推測で論じず、PDF を画像に起こして画素の色を読む。
  • 元データの「アピアランス」を人の目で見る。乗算か、色は何か、ぼかしは何ミリか。スクリーンショット1枚で決まることを、データから推測して時間を使いました。

IDML を書く道具は、最後まで機械に任せきりにはしていません。下地までは機械、仕上げは人。変換したデータは、組版を分かっている人が開いて確かめる前提で使っています。

InDesign 2026(Mac)で確認した内容です。

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Illustrator データの InDesign 変換(アウトライン復元)

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