TECH NOTES / 04
Illustrator を開いたままの Mac が、スリープしない
放置しても、画面が消えない。Mac 本体も眠らない。省エネルギーの設定を見直しても変わらない。原因を追ったら、Illustrator の中にある、画面に出ないパネルでした。
何が起きていたか
Illustrator 2026 には、新機能の紹介カードや動画つきのツールヒントを表示するための内蔵パネル(com.adobe.illustrator.OnBoarding)があります。幅も高さも 0 の、目に見えないパネルです。
このパネルが、「動画を再生中なので画面を消さないで」という札(Video Wake Lock)を立てたまま、下ろさずにいました。どこかで動画が再生され、終わっても札を片づけていないと見られます。
画面が消えないと、macOS の「画面がついている間はスリープしない」という仕組みが働き、本体のスリープまで止まります。札は、ある日は約2時間半、別の日には10時間以上立ったままでした。Illustrator を起動したままにする使い方では、ほぼ毎日眠らなくなります。
原因の突き止め方
スリープを止めているものは、ターミナルで確かめられます。
pmset -g | grep sleep
pmset -g assertions
- 1行目で、
(sleep prevented by …)や(display sleep prevented by …)の後ろに、止めているプロセスの名前が出ます。 - 2行目で、どのプロセスが、どんな札を、いつから持っているかが出ます。今回は
CEPHtmlEngineがNoDisplaySleepAssertion "Video Wake Lock"を持っていました。 - CEPHtmlEngine は、Adobe のアプリがパネルを表示するための共通の部品で、それだけでは何のパネルか分かりません。表示されたプロセス番号(pid)で起動時の引数を見ると、パネルの名前が出てきます。
ps -o command= -p <pid>
ここに com.adobe.illustrator.OnBoarding が出ていれば、今回と同じ原因です。
ターミナルで作業ツールを動かしていると、caffeinate が一時的に出ていることがあります。これは作業中にだけスリープを止めるもので、放置時の原因とは別です。
ほかにもあった、スリープを止めるもの
同じ方法で調べると、Mac 版 LINE の音声の部品(LINE.AudioService)が、本体のスリープを止める札を12本持っていたこともありました。最も古いものは68時間前のものです。音声の再生や通話のたびに札を取り、返し忘れているように見えます(確かめてはいません)。
こちらは画面ではなく本体のスリープを直接止めるので、Illustrator を閉じても眠りません。原因はひとつとは限らないので、pmset で全部を確かめるのが確実です。
当面の対処
- 確実な方法:Illustrator(または LINE)を終了する。札はアプリの終了で片づきます。
- 試す価値がある方法:Illustrator の環境設定 → 一般 →「詳細なツールヒントを表示」をオフにする。動画つきのツールヒントが出なくなるので、札が立たなくなる可能性があります。効果はまだ確かめていません。試す場合は、Illustrator を再起動したあとで
pmset -g assertionsを見て、CEPHtmlEngine の Video Wake Lock が消えているかで判断できます。 - 勧めない方法:パネルのフォルダを Illustrator の中から移動すれば読み込まれなくなりますが、アプリ本体を書き換えることになり、アップデートで元に戻るうえ、副作用も分かりません。
なぜ気づかれにくいか
原因のパネルは画面に出ません。Illustrator は普通に動いていて、エラーも出ません。そして、スリープしないことに気づくのは、たいてい翌朝です。電気代と、ディスプレイの寿命が、少しずつ削られていきます。
Illustrator 2026・macOS(Apple Silicon の Mac)で確認した内容です。
TECH NOTES の記事は、筆者の実務と検証にもとづく記録です。お使いの環境やアプリケーションのバージョンによって結果が異なるため、記載内容について当社は責任を負いかねます。スクリプトを試すときは、必ず複製したデータで行ってください。